第5話

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溶けかけのアイスの袋をそっと開けて、美海は彼を見つめた。 『なぁ。もし、お前のアイスに当たりが出たらさっ…』 「……っ」 彼の言葉の続きが気になったが、 まだ彼に心を許したわけではなかったので、少し眉をしかめて聞いていた。 まだ、彼の名前さえも知らないのだから…。 絶対に愛想良くなんて、アイスを貰った位でしないんだから。 美海は彼の声を聞こえない振りをしながら、 ヒンヤリと甘く弾けるラムネ味のアイスを懐かしく思いながら、 小さい口元で一口ずつ口に入れた。 『この前のお守りの意味、教えてよ、…気になるんだ。』 「~んっ?ぐっ??」 …思ってもいなかった彼の言葉に、思わず加えたアイスが、 自分の口のキャパを超えて口の中に入ってしまったので、 頭がキンキン痛くなってしまった。 彼が、ふざけてまた言ったのかと思い、チラッと彼を見たが、 真顔で見つめる彼と目があってしまう。 なんなのよぉ…本当に。 食べ終わったアイスの棒を彼に見せて美海は言った。 「…ほらっ、ハズレよ!残念ねっ?」 『…チェッ』 彼は舌打ちをした後、川に向かって石を投げた。   彼の投げた石は、水面を走って何回か跳ねたので、 日の光に照らされた水しぶきがキラキラと輝いて、 冬に向かう淋しさが少し薄れた気がした。   彼の後ろ姿を眺めながら、 彼に見せたアイスの棒の裏面に 《あたり》という文字が出ていたのを隠してしまった事に、 罪悪感も感じたが、そのままポケットに入っていたハンカチで アイスの棒を包んで、右の制服のポケットにハンカチごと入れ戻した。
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