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溶けかけのアイスの袋をそっと開けて、美海は彼を見つめた。
『なぁ。もし、お前のアイスに当たりが出たらさっ…』
「……っ」
彼の言葉の続きが気になったが、
まだ彼に心を許したわけではなかったので、少し眉をしかめて聞いていた。
まだ、彼の名前さえも知らないのだから…。
絶対に愛想良くなんて、アイスを貰った位でしないんだから。
美海は彼の声を聞こえない振りをしながら、
ヒンヤリと甘く弾けるラムネ味のアイスを懐かしく思いながら、
小さい口元で一口ずつ口に入れた。
『この前のお守りの意味、教えてよ、…気になるんだ。』
「~んっ?ぐっ??」
…思ってもいなかった彼の言葉に、思わず加えたアイスが、
自分の口のキャパを超えて口の中に入ってしまったので、
頭がキンキン痛くなってしまった。
彼が、ふざけてまた言ったのかと思い、チラッと彼を見たが、
真顔で見つめる彼と目があってしまう。
なんなのよぉ…本当に。
食べ終わったアイスの棒を彼に見せて美海は言った。
「…ほらっ、ハズレよ!残念ねっ?」
『…チェッ』
彼は舌打ちをした後、川に向かって石を投げた。
彼の投げた石は、水面を走って何回か跳ねたので、
日の光に照らされた水しぶきがキラキラと輝いて、
冬に向かう淋しさが少し薄れた気がした。
彼の後ろ姿を眺めながら、
彼に見せたアイスの棒の裏面に
《あたり》という文字が出ていたのを隠してしまった事に、
罪悪感も感じたが、そのままポケットに入っていたハンカチで
アイスの棒を包んで、右の制服のポケットにハンカチごと入れ戻した。
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