6人が本棚に入れています
本棚に追加
『あのさぁ、』
「…な、なによ?」
いきなり、喋り出した彼の声に、《あたり》が出ていた事がバレタのかと、ビクッと美海はしたのだが、冷静を装いながら答えた。
私の声が少し上ずったことに気付かぬ素振りで彼は言葉を続けた。
『お前の、名前聞いてなかったから教えて!それ位なら、いいだろ?』
「あっ、あなたは?人に名前を聞く時は、自分がまず名乗るものなんだからっ…」
彼は、私を見ながらクスリッと笑みを浮かべて答えた。
『俺は、陵!』
「…わ、たしは、…月島美海。」
何で彼が自分の名前を名乗る前に、自分を見て笑ったのか分からない。
『…お前さぁ~』
私に話しかけながら、陵は勢いよく川に向かって走り出し、手に持っていた小石を投げながら叫んで言った。
『~男に免疫ないだろぉぉ~?』
…なっ!!
陵の投げた石は、3回川の表面をとび跳ねた。
絶句だった。
思ってもいない言葉を突然投げかけられた。
「~かっ、関係ないでしょ!何なのよっ。」
ボッと赤面しながら陵から目を逸らし、俯く。
『あはは!あげくっ素直なんだなぁ、美海は!』
「~ちょっ、呼び捨てにしないで!何かっ、文句でもあるわけ?誰にも迷惑掛けてないしっいいでしょ…別に。」
放っといて…ょ。
『~じゃあさ、この石が6回飛んだらさ~』
陵は拾った石を上に翳した後クスッと笑って、また川岸へ走り出した。
次は彼が何を言い出すのか少しあきれ顔で陵を見つめる
『俺と~~付きあってよ!』
「…えっ、は?ちょっ!?」
~あり得ない!!
抵抗するまでもなく、陵の投げた石は水面を勢いよく水しぶきをあげて走り出していた。
『1・2・3~』
「ちょっとぉ~~!!まっ…」
うろたえる私にはお構いなしに陵は、少し口元を緩めながら数を数えていた。
~嘘っ!?
…何っ!!
最初のコメントを投稿しよう!