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煙草の火が紙に燃え移る
小さな火種は少しずつ大きくなってきた
私達は少し離れた所で様子を窺う
―――グワーン
―――グオーン
「すごい音っ‥」
苦しんでいるような耳鳴りが大音響で響く
目玉が逃げ惑い部屋中を駆け巡る
短髪の男性はシンクの下からナイフを何本か取り出し、目玉めがけて投げつける
彼の投げたナイフが一本、目玉に当たり描かれたドアが開いた
「ドアが!ドアが開いたっ!」
「ああ!お前は先に逃げろ!俺はコイツにトドメ刺したら行く!」
ドアはいつ閉まるか分からない
そんな一人だけ逃げるなんて嫌だった
「でもっ!」
「いいから行けよ!あ、ドア閉めんなよ!」
私は安堵から涙を滲ませ頷いた
「当たり前よ!閉める訳ないじゃない!」
まだ燃えてる紙を飛び越え、外に出る
少し離れた所に、あの女性がいた
私は嬉しくて彼女に駆け寄った
「助かったんですね!良かった!」
寝転がる彼女に近寄りしゃがむと、彼女は笛のように喉を鳴らし、虫の息だった
「ど、どうして!?」
彼女のお腹と、喉からはドクドクと血が溢れ出る
「っ‥逃げ‥は、やく‥げほっ‥」
小さな声で必死に何かを言う彼女にパニックになる
どうして?助かった筈じゃないの?
オロオロ助けを呼ぼうと周りを見渡すと、人がこっちへ歩いてきた
「大丈夫よ、人が来たから助かるよ!」
「‥は‥や、く‥逃‥げ、っ!」
「すみません!救急車呼んで下さい!‥あなた一緒にここに居た人!!」
最初6人居た筈だったのに、部屋に入ったら5人しか居なかった。
彼は部屋に入らなかったらしい。
「私、部屋の中の人呼んで来るんで、すみませんが救急車お願いします」
私は急いで部屋の中に戻った。
燃えていた火も消え、これでやっと帰れる。
そう思った
部屋に入り、トドメを刺し終えただろう、彼に話し掛ける
「女性も助かっ‥て‥いやー!!」
彼は
壁に縫い付けられていた
バタンっ
「えっ!?」
ドアの閉まる音に後ろを振り返る
救急車を呼んでいる筈の男性が後ろ手にドアを閉めたのだ
「なっ!何して‥」
怒りや戸惑いに男性を押しのけた瞬間、男性は砂のように地面に砂山を作り、消えた。
閉ざされた描いてあるドア
燃えてしまった紙
再び聞こえる不快な耳鳴り―――
「い、いや‥いやよ‥いやー!!!」
―――グワーン‥
END
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