逃げられない

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ふと気付くと見知らぬ家の前にいた ふと気付くと周りに何人か知らない人がいた どうしてここにいるのか分からない 「なんだ?なんでこんな所にいるんだ?」 一人の男の人が呟いた 周りにいた人は、私を含めて6人 男の人が4人。女の人は私ともう一人。 「ねぇここ何なの?あなた誰なの?」 もう一人の女の人が、気味悪そうに腕をさすりながら私に尋ねる 「私‥分からないです‥」 女の人に誰と聞かれて、私は自分の名前を言おうとした 言えなかった。分からない‥分からない‥ 「私‥自分の名前分からない‥です‥」 自分の名前が分からないなんて馬鹿げてる。 なんだか恥ずかしくなり、下を向き、もごもご話す 「‥お、俺も‥名前分からない‥」 小さく呟きながらしゃがみこんだ男の人は、少し長い痛んだ茶髪を抱え込む 「おい、とりあえず落ち着こうぜ」 短髪の男の人は目の前にある家のドアノブに手をかける なんだか胸騒ぎがする 心臓が震えてるみたいに呼吸が苦しい 入ってはいけない。なんだかそんな気がしてたまらない 「だ、だめ」 はぁはぁと苦しい呼吸の中、震える手で短髪の男の人の袖を掴む 「なんだよ!じゃあ他にどうしろって言うんだよ!」 袖を掴んでいた手を振り払われる 彼は訳の分からない今の状況に苛立っているのだろう 思いの外強く振り払われた体は、簡単に地面に倒れた 「痛っ!」 ずささとハデな音で砂利道に転がる 肘と膝が痛い。擦りむいた傷には砂利と血が滲む 「ごめん‥ごめんな‥」 急いで駆け寄り、短髪の人は深く頭を下げる オロオロと泣きそうな顔をする彼に笑顔で大丈夫だからと、こっちこそごめんねと謝る 嫌な予感なんて気のせいだ 第一、目の前の一軒家を見た記憶も、来た記憶もない。 擦りむいた傷口を洗う為、状況を飲み込む為、私達は家のドアを開けた。
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