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眼鏡の男性はおもむろにナイフを取り出し、自分の左胸に突き刺した
「キャーッ!!」
左胸にナイフを刺した彼は、そのまま微動だにしない
「痛くないんだ‥血も出ない‥」
眼鏡の男性を見ると、左胸にナイフは刺さっているが、血が出ていない
「夢?これは夢なの?どうしたら目覚めるの?」
女性は眼鏡の男性からナイフを抜く
男性の左胸はぽっかりと縦にナイフの穴が開いていて、傷口は黒くなっている
そこで私はふと気付く
「私‥血が出てる‥転んだ傷はまだズキズキ痛い‥んだけど‥?」
自分が家に入る前に負った傷は血が流れ、白い靴下に赤いシミを作っている
「どうして?どうしてあなただけ?」
女性は恐る恐る、自分の指先をナイフで傷付ける
切れ味の良いナイフは女性の細い指先に一本の傷を付けるが、血が出ない
「痛くない‥どうして!?どうしてなの!?」
ヒステリックに泣き喚きながら、手の甲にナイフを何度も突き刺す
「やっ!やめてよ!」
私は慌てて女性からナイフを奪い取り、遠くへ投げる
「もう嫌よ!夢なら覚めてよ!誰か助けて!!」
泣いてもがく女性を抱きしめながら背中をさすり、落ち着かせる
ドアの絵の前に座り込み、泣いている女性の背中をさすっていると、短髪の男性が私に近寄ってきた
「これで傷口拭きなよ」
短髪の男性は見つけてきた赤い箱に入ったティッシュのような物を差し出す
「ありがとう」
赤い箱の中から、紙を一枚取り出すと、その紙は意外にも分厚く、薄めのタオルのような生地だった
「‥?」
紙を広げてみると、そこには絵と、数字が書いてあった
「1‥と、これは?」
短髪の男性に紙を渡す
「人間の腹に薔薇が刺さってんぜ?」
棒人間に少し厚みを付けたような、簡単な絵。
その絵の人間は、お腹に四角い何かがくっ付いていて、それを刺すように薔薇が刺さっている
「この赤い箱、どこにあったの?」
短髪の男性はキッチンの上を指差す
そこには、同じ赤い箱があと3つ置いてあった
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