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たったこれだけの言葉が上手く言えなくて、どれぐらいの時間をかけるんだろう。
そんな突込みを自分の心にして……彼の言葉を待った。
彼は持っていたグラスの氷を泳がしながら瞼を伏せていたけど、肩を揺らして笑みを浮かべると、その綺麗な首を左右に振る。
「全然! 後悔してるとしたら理紗と付き合ったことです。オレのせいでとか思いながらその反面、」
と言って、投げつけるようにグラスをテーブルに置いた彼。
カタンッと音ともに、テーブルの上で揺れたグラス。
その続きを聞くのが怖かった。
けど気になった。
「その反面?」
私は彼の言葉を急かす。
すると彼がテーブルの上で長い指を交差に組んで、頭を抱えるような格好をとる。
“苦しい彼の姿”
「別に、言いたくないのならっ」
「オレは心の中で、何度も彼女を殺していたんです」
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