秘密の恋人

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「はぁ、はぁっ!」 逃げ出して、逃げ出して、逃げ出して 気がつくと戻ってきた“アパート”。 他の場所へ行けばいいのに、木綿先輩が来るかもしれないのに そう気づいたのは、アパートの外壁を目にしてからだった。 無我夢中で走ってる時は、何も考えられなかった。 ただ、先輩から逃げることだけで頭がいっぱいだった。 コンクリートのいつもの階段を上って、部屋まで辿り着く。 理紗はまだ学校だろうから1人になれるといえば、家の中だけだろう、と思っていたのに。 玄関のドアを開けるとすぐ目に飛び込んできたのは、黒のローファーと男物のスニーカーだった。 それも見覚えのあるスニーカーだ。 “刹那” のだ。 咄嗟にそう判断して、踵を返すと聞こえてきた自分の名を呼ぶ声…… 「お姉ちゃん?」 「っ!」 何というタイミング。 今顔を合わせて、気まずいのは私だけじゃないはずだ。
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