153人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
「はぁ、はぁっ!」
逃げ出して、逃げ出して、逃げ出して
気がつくと戻ってきた“アパート”。
他の場所へ行けばいいのに、木綿先輩が来るかもしれないのに
そう気づいたのは、アパートの外壁を目にしてからだった。
無我夢中で走ってる時は、何も考えられなかった。
ただ、先輩から逃げることだけで頭がいっぱいだった。
コンクリートのいつもの階段を上って、部屋まで辿り着く。
理紗はまだ学校だろうから1人になれるといえば、家の中だけだろう、と思っていたのに。
玄関のドアを開けるとすぐ目に飛び込んできたのは、黒のローファーと男物のスニーカーだった。
それも見覚えのあるスニーカーだ。
“刹那” のだ。
咄嗟にそう判断して、踵を返すと聞こえてきた自分の名を呼ぶ声……
「お姉ちゃん?」
「っ!」
何というタイミング。
今顔を合わせて、気まずいのは私だけじゃないはずだ。
最初のコメントを投稿しよう!