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そう思って振り返ると、奥の彼と目が合った。
でもすぐ逸らされた視線……
胸が棘で刺されたように、ズキズキ痛い。
私から逸らそうと思ってたのに、先に逸らされたその意図。
……分かっている。
もう私と彼は“関係ない” ということ。
それを諭すように“拒絶” したということ。
だけどやっぱり、傷ついてしまう。
そんな彼の態度に、この胸が張り裂けそうなってしまう。
瞬時に閉じた瞼。
持ち上げることになったのは、彼女に腕を引かれたからだ。
「お姉ちゃん、何で玄関で突っ立ってるの? 帰って来たなら入ったらいいじゃん?」
その言葉に軽く頷いて、履いていたパンプスを脱ぎ捨てた。
ここでこうやっていても、もう私の前で彼が笑顔を見せてくれることはないだろう。
彼の1番大切なものに、傷をつけたのは私自身なのだから。
“家族” という、1番大切な絆に。
そのまま、何となく腰を下ろした椅子。
ダイニングテーブルを囲って、目の前で雑談を交わしている彼と彼女。
「ね、だから聞いてる? お姉ちゃん?」
「えっ?」
その呼びかけに、伏せていた瞼を上げると彼女と目が合った。
キラキラした彼女の瞳が、覗き込んでくる。
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