秘密の恋人

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顔を赤くして落ちてしまった氷を見つめていると、すぐに用意された布巾。 「本当にドジですね」 柔らかく笑った後、片づけ始める彼。 濡れた箇所が、魔法のように元の姿に戻っていく…… その箇所を、ぼーっと見つめる私。 そんな私と、彼は一瞬だけ目を合わせると言葉を続けた。 「氷って気をつけないと危ないですよ? 一歩間違えば火傷します!」 その言葉にフッと笑みを浮かべて「そんな大袈裟な、」と言葉を返すと、こちらに向けられた強い眼差し。 「大袈裟とかじゃなくて、心配なんです!」 その言葉に、……一瞬意識を失いそうになった。 ねぇ知ってる? その言葉で、私がどれだけドキドキしているか。 ねぇ知ってる? あなたのその言葉で、私がどれだけ切なくなるか。 「綺麗になりましたね」 と言った彼は、すぐに私から視線を逸らした。 そんな表情をして“心配” だと言われても何も伝わってこないわよ!
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