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田辺は、違った。 田辺は、張り巡らされた 分厚い暗幕の迷路の中でも、 それに惑わされることなく、 私のいる場所へまっすぐ 向かって来てくれた。 だから、私は。 今度は迷わずに、 田辺の方を向いて、 待っていよう。 じたばたせずに、 田辺の差し伸べてくれる手を 掴むだけでいい。 田辺は、いつも変わらず、 きっとそこにいてくれる。 明るい廊下から見ると、 教室の中は真っ暗に見えた。 薄暗い部屋をそっと覗くと、 前方に補助灯が灯っている。 窓際に大きな影が、ひとつ。 田辺は椅子に腰かけ、 窓枠に頬杖をついて 外を眺めていた。
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