雨はハサミによって切り裂かれ

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 そうして教えてくれた場所に私は向かった。何も思考をしなかった。まるでベルトコンベアに乗せられたように、機械的に右足と左足を交互に出した。そしてそこに着いたとき、彼は見知らぬ女性と接吻を交わしていた。それはテレビに映し出されたキスシーンのように非現実的で、そのときの私は夢幻でも見ているのではないかと笑んだ。笑うしかない。こんなことが、起こってたまるだろうか。 「あ、ああ、よう」彼は言う。  彼に抱かれた女は「誰?」と彼に聞く。彼はそれに答えない。 「ねえ、学校は?やめたってどういうこと?新しい仕事って?なんで私に教えてくれなかったの?」私は問う。私の口は止まらない。「そもそも一ヶ月の間何していたのか教えてくれない?それに、それ誰?女?その女は遊びだけの関係?なんでここでキスしてるの?私は?私を裏切ったの?」 「い、いや……」彼は私から顔を逸らす。 「……わかった」  私はそう言った。何がわかったのだろう、言った本人たる私にもよくわからない。それでも、形而上では何かがわかった。彼にとっての私が何で、その女がなんなのか。  彼の言い訳など聞きたくもなかった。私はその店から飛び出す。  近くのコンビニに入ると、最も刃渡りの長いハサミを買った。  コンビニから出るなりすぐにそれを手にする。  私は、彼と女がいる店へ歩む。  雨に濡れて、きっとハサミは錆びるだろう。  ハサミに映った私の顔は、ひどく醜く思えた。
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