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イザベラは次の日、登校してきた。早速、その日の昼休みにチアダンスの練習が屋上で行われた。基礎練習がひとしきり終えたところで、イザベラがメンバーを集めてコンクリート床に車座になり、彼女の報告会が始まった。
「みなさん、何日も練習に参加できなくてごめんなさい。わたし、故郷のホルスタイン王国に帰っていました。そこで、コンピューター・ソフトを作ってました。名前を『監督クン』と言います」
晶子たちはチアダンスの練習をこの日までやっていなかったので、イザベラにまた愚痴られるのかと不安だったが、話がコンピューター・ソフトのことだったのでホッとして耳を傾けていた。
「みなさんもご存知のように、野球部には優秀な監督がいません。それで、わたし、野球のことを少し研究していたら、監督の采配は実は大変重要だということに気が付きました。わたしは少し、将棋やチェスをたしなみますが、野球のゲームもそれに似ていることに気が付きました。選手一人ひとりの技量ももちろん大切なのですが、この選手たちを戦況によってどのように使っていくかというのは、その将棋やチェスと同じような戦術があることが分かったのです。それで、急きょ、戦況を分析して適切な戦術を即座に提案してくれるコンピューター・ソフトが必要だと気が付き、『監督クン』というソフトを作ってまいりました」
イザベラは簡単に言ったが、朋美はそのソフト開発を短期間でやりとげるのにどれだけの費用と人材が必要かということをおおよそ知っていて、イザベラの底知れない財力と行動力に内心驚嘆した。
「その監督クンはだれでも使えるものなの?」
晶子が尋ねた。
「野球のことが分かっていて、コンピューターの知識がある人でないとだめかもしれませんです」
そう言いながら、イザベラは不安顔になった。朋美がすかさず、手を挙げた。
「それなら、良平さんと秀太さんが共同してやれば良いわよ」
「おお、それはグッド・サジェスチョンですね、朋美」
イザベラは朋美の意見に喜んだ。
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