第16話 覚醒

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            ***  翌日は野球部の部会があった。放課後、野球部の部室に集まった約三十名の部員たちに、イザベラが持参したパソコンを使って「監督クン」の紹介と説明が行われた。そして、今度の交流試合の対戦相手である私立竜谷高校野球部について、部員から聞き取り調査を行った。  さらに、秀太が集計した各部員の打撃や走塁、防御率などの戦績データのほかに、部員全員には各自の得意技や希望する守備位置など自己申告データをアンケート用紙に記入してもらった。だが、この日もピッチャーの椿俊介は欠席だった。 「頼りになるピッチャーは椿くんだけなの?」  野球部の新任監督である伊藤直美が部員の顔を見回しながら言った。 「ピッチャーはあと三人います。上田、朝永、小林、新監督に自己紹介しろ」  キャプテンの川添信吾が発言した。そして、信吾に指名された三人が起立して、自己紹介を始めた。  上田明は、一年A組で185センチの長身から投げ下ろす速球に威力があるがコントロールに課題があった。朝永千春は一年C組で、170センチと小柄だがコントロールに自信があり、コースを使い分けてボールを打たせて獲る軟投派だった。180センチの小林浩は二年C組で、キレのある変化球を得意とするチーム唯一の左腕投手だった。 「じゃあ、今度の竜谷との試合は上田くん、朝永くん、小林くんの三人を中心に乗り切りましょう。椿くんは補欠ということにしましょう」 「監督、それじゃあ次の試合は勝てないですよ。相手は橋上健司というホームランバッターを中心に打撃のチームですから。それに、あそこの藤島武志は本格派ピッチャーでそう簡単には攻略できませんし…」  川添キャプテンが嘆息交じりに言った。 「もてる戦力を十二分に活用する。それが、わたしたちのチームよ。『監督クン』もあることだし、みんな勝利への希望を捨てないで頑張りましょう」 「そうよ、伊藤監督のおっしゃる通りであります。それに、わたしがプロデュースしたチアガール『AKBウィンズ』もその試合でデビューしますから、みんな頑張りましょう」 「おう!」  イザベラの言葉に、野球部員は右手を高く上げて奮起の声をあげた。
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