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自分はヒロにとってそれだけの存在なのかと思うと、アリアは急に切なくなった。
また置き去りにされた。孤独感がどっしりとアリアの心の中に重く鎮座した。
何処をどう帰ったのか、東京のマンションへ着くと、着替えもせずに、アリアは眠りについた。
「ねえ、アリア起きて。一体いつ帰ってきたの」
「おはよう」
柚子の甲高い声が、アリアの耳元で目覚まし代わりに響いたが、アリアは薄眼をあけて、気の抜けた挨拶をした。
「おはようじゃないわよ、心配していたのに。ヒロはどうしたの、何かあったの?」
柚子は一層キンキン声でまくし立てたのだが、アリアは上の空だった。
また、ヒロに置いていかれた。
布団から目だけ出して、カーテンを開ける柚子の姿を目で追った。
「柚子は、」
「え?」
振り返った柚子の前に、布団をまくってベッドサイドに座ったアリアは、真剣な表情で柚子を見つめた。
「柚子は、ずっとここにいるよね?」
「どうしたの、急に。……いるわよ」
「そう。柚子、ありがとう」
そう言ってアリアは柚子に近づいてぎゅっと抱きしめた。
「変なの、照れるじゃない」
柚子は戸惑いながらも小さな子供にするように、アリアの背中を優しく撫ぜた。
「ヒロと何かあったの」
「少しの間こうしていていい?」
「いいけれど、ドアのところで十無と昇が硬直しているわよ」
昨夜のうちに、柚子は十無と昇にアリアが帰ってきたことを連絡していたらしい。
早速、二人そろって来たのだった。
「インターホンを鳴らしたけれど、誰も出てこないから……」
十無はばつが悪そうにぼそぼそと言い訳し、横にいた昇も「昨日、帰ってきたって聞いて。……また来る」と言ってそそくさと帰ってしまった。
「いつもタイミングが悪いんだから。アリアもむやみに抱きついちゃだめよ、また勘違いされたわ」
「人恋しくて」
柚子から離れたアリアは寂しそうに呟き、柚子をじっと見つめた。
「アリア、男の格好で……なんだか変な気持ちになっちゃったじゃない。もう、自覚してよね」
冗談交じりに、でも顔を少し赤らめた柚子は、小走りに部屋から逃げた。
「じゃ、女の格好だったらいいのか」
アリアはわかっていなかった。
昨夜そのまま寝てしまってよれよれになっていた服を着替えてから、アリアはキッチンへ行った。
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