「サヨナラ・・・」

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「…和馬が愛してるのは私じゃない」 視線を腹部に落としたまま、小さく途切れた声を発す。 「綾子…」 不安気な表情を浮かべ私の顔を覗き込む。 「和馬が愛してるのは梨花さんだけ。どんなに『愛してる』の言葉を並べても、初めから一緒に歩む未来を見るつもりがないなら、それは愛じゃない。…でも、それはここまで来た私も同じ。私達の時間は、初めから恋愛ごっこだったんだよ」 必死に作り上げた笑顔の上を、冷たい涙がぽろぽろと流れていく。 梨花を傷つけ・・・ 翔太を傷つけ・・・ そこに残ったものは何もない。 「俺は、恋愛ごっこだなんて思ったことは一度も無い。一緒になれないなら気持ちまで遊びだと言うのか?」 和馬は濡れた私の頬に触れ、指で涙を拭き取る。 「今まで一緒にいた時間をそんな言い方するなよ」 頬を撫でた指を肩に乗せ、真っ直ぐに私を見つめる。 「私、このままだと壊れちゃう…」 和馬の目から視線を外し、震える唇から弱弱しい声を落とす。 「え?」 「和馬の子供が産まれたら、どんな顔で和馬は子供に笑い掛けるんだろう、梨花さんと一緒にどんな幸せな家族の時間を過ごしてるんだろう。きっと、そんな事ばかり考えて嫉妬する。…和馬から全てを奪いたくなるかも知れない」 「…」 「そんな自分になるのが怖い。堪えられない」 「綾子、お前はそんな女じゃ…」 「私はっ、私はそんな冷酷なことができる女だよ!」 彼の言葉を遮り言い放つ。
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