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重苦しい沈黙が続いたせいか、緊迫感で手に汗が滲み、脈拍数も更に上がって行くのを感じる。
和馬の目を見つめ返す事が出来ず、視線を和馬の手へと逸らした。
「…うん」
生唾を飲み込んだ勢いで小さな声を洩らす。
「話って言うのはね、この前の電話の話で・・・」
いざ和馬を目の前にすると、情けなくも言葉を詰まらせる私。
「…」
黙って私の言葉を待つ和馬。
煙を吐き出す和馬の微かな息使いだけが聞こえる。
逃げちゃ駄目…いま言わなきゃ!
大きな深呼吸をして和馬に視線を戻す。
恐怖感にも似た緊張感に耐えるため、左手首を掴んでいた右手にグッと力を入れた。
「この前の話だけど、和馬、私に伝えてないことあるでしょ?」
声に力を入れて話を切り出した。和馬は唇を閉じたまま私を見つめ返す。
「…そうだな。伝える必要のないことならある」
煙草の火を灰皿に押し付けながら、彼は静かな声で呟いた。
灰皿の中で途切れていく白い煙。
私は押し潰され折れ曲がった煙草から、和馬に再び視線を向ける。
「伝える必要の無いこと?…それを教えて。聞きたいの。和馬の口から」
「以前にも言ったはずだ。お前が聞いてつらくなるだけの事は言わない。…聞いても仕方ない」
「仕方ない?それは聞いた私が決める事。勝手に必要ないなんて決めつけないで。そんなの狡いだけだよ」
伏せたくなる瞼に力を入れる。震えそうになる唇に更に力を入れる。
「…」
和馬は口端を歪め私を見つめる。
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