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ピピピピピピピピピピピカチッ
「……もう朝か…」
枕元の時計を止め、むくりと起き上がる
まだ7時と時間が早いこともあって、外はまだ少し暗い
「……またあの夢……か」
ここ数日、いつもあの夢を見る。偶然なのか、それとも何かの予兆なのか…
「……バカらしい。起きるか」
考えるのをやめ、ベットから出た俺は高校の制服に着替える
そして、着替え終わると、そのまま準備してあった教材を黒谷一と名前が書かれた鞄に詰める
黒谷一(クロヤハジメ)それが俺のこの世界での名前だ
前世はどんな名前だったのか、どんな家族がいたのかは忘れたが、今の名前はこれなのだ
この黒谷家に生まれ、一という名前をつけてもらって17年
俺はこの17年を前世の記憶を持って生きてきた
死んだと思っていたら、次の瞬間には赤ん坊になって病院の中
驚きすぎて声も出せずにいると、逆さにされて尻を叩かれたのはいい思い出だ
いや、あれ結構痛いんだよ?マジで
ともかく、俺は転生とやらをしたようだったのだ。だが、転生したからと言って、この世界に魔法やら超能力なんかが存在しているわけでもなく、俺が特別な力を手にしたわけでもない。
俺は記憶を持った以外はなんら変わりない一般人であり、この世界も俺のなかの常識におさまる世界だ
……ある一つを除いてはな
「兄ちゃーん。ごはんできたよー」
ガチャリと開いた扉から顔を覗かせる『青色の髪』をした少年
「おぉ。駿二。お前、早いのな」
「兄ちゃんがおそいだけだよ!」
ご飯出来てるからと、そう言い残して顔を引っ込める駿二
黒谷駿二(クロヤシュンジ)。7才
10才下の俺の弟だ
ホント、朝から元気だよな
勉強机の上に荷物をおき、そのまま二階のダイニングへ降りる
階段を降りる途中で、味噌汁の匂いが漂ってきた
「あら、一。おはよう」
「おー。起きたか」
「おはよ。母さん、親父」
台所で味噌汁を作る『青髪』の女性と、テーブルで新聞を広げる『紫髪』の男性
俺の両親、黒谷武(クロヤタケシ)と黒谷静(クロヤシズカ)だ
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