第1話

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「俺、生化学部で。」 「うん?」 俺の言葉に、来栖が首をかたげる。 「部活。生物と科学が混じって生化学部。まあ、生物や科学に掠ってるもんなら、何の活動してもいい部活なんだけど。」 俺らの部活、マイナーだからあまり知られてないんだよな。 「ふうん。そんな部活あるんだ。」 「うん。それで、その活動中に来栖を見たんだ。」 「………………………。」 「花壇の花が踏まれてて。俺、直そうと思って外に出たら、そこに来栖がいたんだ。」 来栖が黙ってるから、なんか顔見られない。ずっと、お茶を見てる。 「来栖、花を直して。キチンと直して…………、笑ったんだ。 初めて見た、笑顔だったんだ。 友達と一緒にいるとき、確かに来栖笑ってるんだけど、違ったんだ。 上手く言えないけど、何か一線引いたような…………そんな感じ? とにかく、初めて見たんだ。見た気がしたんだ。来栖の本当の笑顔。」 「……………。」
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