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波の音…近くで聞くとこんな音だっけ…。
波の音に同調させるようゆっくりと呼吸をする。
…和馬…あなたは今、何を思っていますか?
私はやっと、儚い夢から醒めたみたいです…。
顔を上げ、揺らめく遠くの水面を見つめる。
最後にあなたが言った言葉。
「大切なのは自分を取り巻く環境と家族」…それがあなたの本心。
初めから…ずっと。
それを分かっていたのに、夢を見てしまったのは私。
私は、いつまでも夢を見ていたかったんだ…。
醒めてしまえば儚く消える夢。
跡に残されたものは、あなたを愛した確かな記憶だけ。
「愛されていた」と信じたい最後の願い。
…あなたの本当の気持ちは、あなたにしか分からない。
でも、信じたい…私は愛されていたのだと。
私がいつかまた、人を愛せる日が来るように。
人に愛される女になれるように。
何時しか…
一緒に歩む未来を見つめてくれる人に、また出逢えるように…。
「…」
膝を抱えていた両手を外し、ゆっくりと立ち上がる。
両手を高く上げ、背伸びをして空を仰ぐ。
大きな深呼吸を2回した後、光る海を見つめ静かな笑みを溢した。
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