優しいkiss

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囁くように揺れる波の音。 美しい白浜へ続く階段を囲む様に、海浜植物のハマユウの花が真っ白に咲き誇る。 「綾子~!早く早くぅ~!」 裸足になって砂浜を駆ける唯は振り返り、階段を降りる私に大きく手を振った。 「はいはい、分かったって」 唯の奴、やけにはしゃいでんなぁ~。 砂浜を裸足で海までダッシュ!って、子供かよ! 軽く手を振り返し、親友の無邪気さにぷっと吹き出し笑いをした。 雲一つ無い真っ青な空に、どこまでも続く水平線。 ふわりとそよぐ風に鼻腔をくすぐる海の香り。 水面が揺れる度、太陽の光が反射してキラキラと眩しく目に映る。 「もうすぐ夏も終わりか・・・」 腕を伸ばし、太陽に手のひらをかざす。 指の隙間から溢れる光。 空を仰ぎながら、小さなため息と共に目を細めた。 ここは伊良湖の恋路ヶ浜。 和馬と別れてから約三ヶ月、すっかりふさぎ込んでしまった私を外に連れ出そうと、唯の提案でドライブがてらここまで来た。 「なんであんたと恋路ヶ浜?あそこは恋人達の愛の語らいスポットでしょ?行きたいなら直人と行けよ」 そう眉間にしわを寄せる私に対し、 「だって、直人忙しくて連れてってくれないんだもん。 今年まだ一回も海見てないし、やっぱドライブは海でしょ海!」 運転手と言う主導権を握る唯は、そう言って私をこの浜辺まで連れ出したのだ。 「水着持ってたら泳ぎたいよねー」 ふわふわと風になびく白いワンピースを膝まで捲し上げ、唯は波を蹴り飛ばす様にパシャパシャと足踏みをする。 「こんなとこで泳ぐつもり?水着持ってても私はイヤだね。お盆過ぎてるからクラゲ出るぞ」 私は波が届かないぎりぎりの砂浜にしゃがみ込み、親友の上げる水飛沫を微笑みを浮かべ眺めていた。
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