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私の言葉で、唯は水の中を歩く足取りを止めた。
「…生理のこと?」
膝を抱え砂の上にしゃがみ込む私を見下ろし、静かに唯が問う。
「うん…。オペしてもう半年以上経ってるのに、残った右の卵巣も沈黙したまんま。このまま一生、排卵が無いのかも」
顔を上げ、親友に苦し紛れの笑みを見せた。
正常な卵巣が残されているため、オペを終えて翌月か遅くても3ヶ月後には最初の月経が来ると伝えられていた。
しかし、オペから半年以上経った今もまだ月経が無い。
「先生には精神面の影響って言われてるんでしょ?」
「うん…そうみたい。体重もこの数ヶ月で5㎏減っちゃったしね」
「生理って精神面で影響受けやすいから…そんなに体重落ちたら尚更だよ」
唯は眉を寄せ、唇をきつく閉じた。
水音を立てながら砂浜に上がり、私の横にゆっくりと腰を下ろす。
「きっと、時間の流れが綾子を癒してくれるよ…」
膝を抱え目を伏せる私を見つめ、唯は優しく言葉をかける。
私は頭を起こし、太陽の光が反射する水面へと視線を戻した。
「私、和馬と別れたこと後悔してないよ。人を傷つけ、傷ついて…いっぱい悩んで、いっぱい泣いて…全てが終わってこうして一人になって、一人になったからこそ気づいたことがたくさんある…」
「…」
唯は私の横顔を見つめ、次の言葉を待ちながら小さく瞬きで頷いた。
私は潮の香りをゆっくりと吸い込み、言葉を続ける。
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