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「女に夢を見させないのが…男の責任」
胸がドクンと大きな音を立てる。
唇をクッと噛み、目線をペットボトルに落とした。
「でも、女は夢を見たい…。例え叶わなくても、愛されてると信じたい。本心じゃ無かったとしても、言葉が欲しいのが女でしょ?」
唯はみわさんの顔を見つめ、途切れ途切れに言葉を並べた。
「そうね、それが女ね。何が本当の思いやりなのか…何が本当の優しさなのか…
考えるほど分からなくなるわよね…」
みわさんは白い雲の浮かぶ空を見上げ、眩しそうに目を細めた。
「それは…長い月日の流れによって見えてくるものなのかも知れない」
唯は草木の香りを優しく包んだ風を吸い込みながら、そっと目を閉じる。
「人間は愛されるために産まれてくるんだもん。愛を求めてしまうのは仕方のないこと。それが…年を重ねるにつれて形を変えていくだけ」
私はゆっくりと立ち上がり、手を振る千咲に心からの微笑みを送る。
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