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もし、
もっと早く和馬と出会えていれば…
もし、
和馬が私を選んでくれていたら…
どんなに「もし」を繰り返しても、それは空想の世界でしかない。
自分の中で築きあげた、現実よりも遥かに美しい空想の世界。
なぜ、人は苦しい恋愛ほど美しく見えてしまうのだろう。
8年という時が経った今も、思い出すのはあなたの笑顔。
私の中で今も尚、美しい『記憶』として刻まれている――――。
「ママ、あっちに小さなお魚いたよ、見に行こうよ!」
千咲が、満面の笑みで私の手を引っ張る。
「ちさ、ママの手を引っ張っちゃ駄目だ。ママが転んだら大変なんだぞ」
翔太が慌てて千咲の手を繋ぐ。
「大丈夫だって~、パパは心配性だなぁ。転びそうになったら空中回転で着地するから」
「バカ!冗談言ってる場合か!転んでお腹打ったらどうするんだよ。お前一人の体じゃないんだから、頼むから気をつけてくれよ」
翔太は口を尖らせた後、大きなため息をついた。
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