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爽やかな5月の風が、芽吹き始めた木々の葉を揺らす。
春の訪れにより、まだ目覚めたばかりの小川の水は、ひんやりと冷たく感じられる。
「千咲~、一人で川の中に入っちゃ駄目だからね~」
私はテーブルに紙皿と割り箸を並べ、川のほとりで遊ぶ娘に手を振る。
娘は振り返り、両手で何かを握りしめ私の方へと走り出した。
「ママ~!見て見て!川の中に綺麗な石があったの!」
ピンクの花がパッと咲いたような眩しい笑顔。
娘は嬉しそうに手のひらを差し出した。
「本当だね~!まん丸な石、可愛いね」
大切そうに手に乗せられた数個の石を見つめ、私はにっこり笑い返した。
「千咲ちゃん、川の石がどうして丸いか知ってる?」
私の後ろからヒョイと唯が顔を覗かせる。
「ん~、わかんない!」
不思議そうに首を傾げる千咲。
「それはね、川の…」
「川の水に流されてコロコロ転がってるうちに、角っこが削られて丸くなるんだぞ」
突然、唯の言葉を遮り解説する声が聞こえた。
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