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でも…
結局残ったものは、恐怖心にも似た複雑な感情。
それは、決して彼を憎んでいるからじゃない。
ただ、心が乱れるのが怖かった。
あの頃の彼との思い出を、汚したくなかった…
彼への想いを封印し続けたかったのだ…。
「和馬、大学辞めて親の病院継いだんだってね。あの和馬が院長だからなぁ~不思議な感覚。惜しくも、院長婦人になり損ねた。…あっ、私、候補にも入れて貰えなかったんだったわ」
切った野菜をトレーにポンポンと投げ入れ、苦笑いを溢す。
「それは、私も同じでしょ?私もドクターの妻になり損ねた」
唯は冗談めかして笑うと、ベンチから立ち上がり腰を屈める。
「ねぇ、唯は別に会っても大丈夫じゃないの?水島先生と誓った【お互いの幸せを願う、見守る愛】それを改めて誓うための再会にするとか」
私は、クーラーボックスを探る唯を見下ろしニヤリと笑う。
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