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唯の話によると、水島先生から4年前に一度だけメールが来たことがあるらしい。
メールには先生の娘、凛ちゃんが、オレンジ色のワンピースに麦わら帽子を被って、無邪気に笑う写真が添付されていた。
「なんか、罪悪感あるよね…奥さん、私の娘と自分の娘が同じ名前って知ったら…」
唯はそう呟き、複雑な表情で苦笑いを溢したのを覚えている。
「その恐怖感は、本当に守るべき者ができないと、分からないんでしょうね」
私と唯の沈黙を破る、落ち着いた声色。
私と唯は目を丸くして同時に振り返る。
「みわさ~ん、ビックリするじゃんかぁ~」
私は大きく息を吐き、胸を撫で下ろす。
「いつから後ろにいたんですか?」
唯がみわさんを見上げる。
「え?『違う未来を見たかった』…あたりかな?遅くなってごめんね。はい、ビールの追加と、忘れ物のソース買って来たよ」
みわさんは微笑み、買い物袋をテーブルに置いた。
気品に満ちたオーラを放つみわさん。
40代半ばで初めての出産をした彼女は、母になっても相変わらず美しい。
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