彼女の想い

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―――――…… ――ピンポーン! 次の日の早朝、“ココ” へやって来た私は、迷うことなくインターホンを押した。 ……日曜日。 普通のカップルが、楽しみにする曜日。 この日を、最後の日にしようと胸に決めていた。 「……理香?」 すぐに玄関のドアが開けられて、まだパジャマ姿の彼が顔を覗かす。 そしていきなりすっぽりとその胸の中へ……磁石のように引き寄せられた。 「……良かった。来てくれて」 「連絡がなくて、心配してたかしら?」 「ええ、とても」 柔らかく返ってきた、“とても” という言葉。 それだけで、すごく心が温かくなる。 「携帯、どうかしたの?」 「実はトイレに水没させちゃって、だからこんな朝早くに来てごめんなさい」 「ははっ、別にいいですよ! それにオレもやったことありますもん」 と言った彼の目は、とても優しい瞳をしていた。
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