彼女の想い

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それは、“イルカの生態について” とか書かれている説明書みたいな看板だった。 どこの水族館でもよく目にするアレだ。 ……なる程ね。 「ほらここに書いてますよ? 鳴き声が小鳥のようだって……体長は3メートルから5メートルって、相当デカイですよね?」 「……本当、イルカが小鳥の鳴き声を出すだなんて……聞いてみたくなるわよね?」 「ちょっと、待っててくださいね?」 と言った彼は、イルカめがけて必死に話しかけ始めた。 その姿が、何とも言えなくて可愛らしい。 ……でも。 「そんなことで、鳴き声なんて聞けるのかしら?」 「聞けませんかねー? あッ、水槽に向かって一緒に変顔とかしてみます?」 「え? 嫌よ、そんなのっ」 だって、それはさすがに恥ずかしい。 「……いいから、いいから! いきますよ?」 「きゃあ!」 ――――――…… 「あははは。理香の顔、最高!」 というわけで、昼食はパスタ。 値段の割には美味しいお店だ。 その店内で響いてるのは、彼の笑い声だけだった。 大袈裟に私の耳に届いて、頬を膨らませた。
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