彼女の想い

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……深夜。 気まずいまま彼の家を後にした。 “幸せ”が訪れたと思うと、すぐに音もなく崩れていく。 朝まで彼の家で過ごすことさえ……許されない。 「……はぁ」 自然と出るため息を胸に、アパートの階段を上る。 でも私は、1つ胸に決めていたことがあった。 昔から強くは出れない彼女への態度。 今夜はそれを変えてみせる。 ――ガチャッ! 玄関のドアを開くと、いきなり耳に届いた何かの音。 彼女が家にいると分かって、その姿を確認しようとする。 足が勝手に、音のする方に向けられた。 ……向かった先は、バスルーム。 耳に届いた音は、シャワーの音だった。 “チャンス?” その言葉を胸に秘めて、目の前のドアに手をかけた。 ……ガラッ! ドアを開けてすぐ目に飛び込んできたのは、彼女の着替えと脱ぎ去られた衣服。 後は、キャラクターの大きなバスタオル。 ……そのまま浴室のドアにも手をかける。 ガラスのドアの影になっていた彼女の姿。 秘密の確認が出来なくて、ガラスのドアを開けた。 浴室の中は曇っていて……前がよく見えない。 お湯の蒸気で、視界が邪魔される。 それでも、息を潜めてその秘密の確認を急ぐ。 ……その時、シャワーが止まった。 彼女が、蛇口を捻ったんだと理解して身体を震わせた。 「……お姉ちゃん、そんなに気になるの?」
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