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彼より逞しい腕、腕力、迫力。
……怯えない方が、可笑しいだろう。
それにこの人には、手加減というものを少しも持ち合わせていない。
力任せで引きづられるように連れ出されたのだから。
……気がついた時には、視界に映ったのは真っ暗闇の空とそして1台の車だけだった。
レストランの入り口付近はとても賑やかで活気が溢れていたけど、裏口は人1人、猫一匹も通らないような路地裏だ。
そこのすぐ近くに横付けされている真っ黒い車。
窓ガラスも全てが、黒いシートみたいなもので覆われている。
「……っ?」
「お姉さん、悪く思うなよ? アイツを傷つけたアンタがイケねぇーんだよ?」
と表情も見えないその顔で言った後、その人は次に車に向かって言葉を発した。
「先輩、連れてきましたよ!」
……“先輩?”
その人の告げた、名詞。
何故か、今まで以上の恐怖が胸を締め付けた。
その言葉が合図のように車の後部座席のドアが開くと、「悪かったな」と “先輩” と呼ばれた人が姿を現す。
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