彼女の想い

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「もう出て行って! 早く出て行かないと熱いお湯をかけて、お姉ちゃんも火傷させてやるんだからっ!」 ……冷たく響き渡る声。 いつもの高いトーンではなく、低音だ。 彼女は本気で私を恨んでいる。 ……でも、いつバレたのだろう? 今はそういう問題でないことぐらい分かっている。 ――… シャワールームを出ると、目頭に込み上げてくる感情。 ……苦しくて、私はそのまま自分の携帯を手に取った。 そしてアドレスから探す彼の名前。 ……けどそのまま携帯を閉じた。 この期に及んで、また彼にすがろうというの? 私は知っている。 彼と彼女の “秘密” がある限り、……それが、 “一生” ついて回ることぐらい。 私達の仲を、一生 “邪魔” をすることぐらい。 ……知っている。 だから彼は私を選べないのだ。 ううん、最初からその位置に自分がいるのかさえ……分からない。 ……カチャッ! それからすぐバスルームから出てきた彼女。 パジャマを着て、さっぱりとしたその顔。 さっきの悪魔のような顔は、もうどこにもなかった。 ……けど、彼女の出現に思わず身体が震えたのも確かだ。 「お姉ちゃん、刹那も知らない本当のことを教えてあげよっか?」 と彼女は、意味深にその目を合わせてくる。
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