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その言葉に、思わず持っていた携帯を落としそうになった。
するとゆっくり目の前までやってきた彼女に……携帯を奪われる。
同時にその携帯が、目の前で真っ二つになってしまった。
バキッ!
「…っ!」
「妹の男の番号を登録してるお姉ちゃんが悪いのよ!」
このか弱い彼女の細い腕のどこにそんな力があるのだろう?
……そう思ってしまうぐらいに、見事に携帯は壊れた。
そして、スローモーションのように足元に転がった。
……別に友達が多い訳ではない。
登録されていた数だって、100にも満たない。
だから携帯が壊れたって、電波線が遮断されたって……この私と繋がっていたいと思う人なんて、高が知れている。
だけど、彼との “繋がり” を絶たれたことだけは、……ショックを隠しきれない。
今の私は彼女の行動に、“怒り” というより “驚き” という表現の方が……正しかった。
だって私には、怒る資格なんてないのだから。
「ふうーん、お姉ちゃん怒らないのぉ? それとも我慢してるのかなぁ?」
私の顔を覗き込む彼女。
片方の眉だけ上がって、鋭い目つきになっている。
でもまだ怒りがおさまらないのか、グシャリッ、と携帯を踏みつけた後、……ドサッとソファーに身体を預けた。
そのままため息を吐いて、更に言葉を続けた。
「この火傷のこと、刹那は真実を何1つ知らないからっ!」
と言って、一瞬だけ悲しい瞳をした彼女。
その瞳を、私は見逃さなかった。
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