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……けどもしかしたらそのことが、余計彼女を傷つけていたのかもしれない。
自分のエゴだけで、押し付けるようにそんなことをしたって……本当の家族になんてなれる訳ないのに。
彼女が心を開いてくれない限りは……そんなこと無意味なはずなのに。
「あたしにとってあの家は、 “人形” の居場所でしかなかった! 本当の居場所なんて、何処にもなかったんだよっ……!」
涙をグッと噛み締めて、唇を震わす彼女。
私は痛いくらい彼女の気持ちがよく分かった。
いくら本当の家族になりたいと思っていても、片想いでは……重荷になることだってある。
実の親を失った彼女に気を使った両親は、何をするにも私より彼女を優先させた。
彼女にばかりに気を使っていた。
でも本当の家族なら……気を使うなんてことはしないと思う。
誤った道へ進むのなら、正すことも大事だろう。
甘やかすだけじゃ、彼女のためにはならなかったのだ。
「あたしね、毎日を人形のように過ごしていた時……刹那と出会ったの! ……人を愛する喜びを初めて知ったんだよ!! だからあたしには、刹那だけなんだもんっ!! 彼を手に入れるためなら、手段を選ばないっ」
「理紗……」
「間違ってるってことぐらい分かってるよ! けどお姉ちゃんには一生分からないっ! 何もかも持ってるお姉ちゃんには、分からないよっ!! 本気で、欲しいものなんて今までなかったんでしょ? それはきっと、何もしなくても、欲しいものは全て手にしてたからなんだよ!」
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