彼女の想い

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“本気で、欲しいもの” “本気で、手に入れたいと望んだもの” ……あったか、なかったか。 彼女に言われて、深く考えた。 考えた結果、なかったと答えがまとまる。 でも全てを手に入れてたなんて、そんなことはないと思う。 「だからお姉ちゃん、お願いっ……刹那を盗らないで……あたし刹那がいないと生きていけないのっ……! 刹那があたしの全てなんだよっ!! 全てを諦めて生きてきたあたし、刹那までも失ったら……もう死んじゃうから……っ!」 と言って崩れ落ちるようにしゃがみ込んだ彼女は、私の足にしがみついて泣きじゃくる。 どんなに彼が大切なのか、彼女を見ていたら痛いほど分かる。 彼女にとって、彼は生きる希望なのだ。 それをこの私に、壊す権利なんかない……! 「理紗、ごめんね? 大丈夫よ! 桐原君とは何でもないんだから……」 「……お姉ちゃん、本当っ?」 「ええ、本当よ! だからちゃんと彼を捕まえときなさいよ?」 「うん、うん! お姉ちゃん、ありがとう……っ」 嘘の笑顔作って彼女を励ましたところで、この胸の痛みが消える訳はなく ……鋭いナイフで心臓を一突きにされたみたいに、痛くてたまらない。 “秘密の恋人” それは、何て残酷な言葉なのだろう。 一生、口に出しては言えない “好き” の気持ち。 それならいっそ、この関係を断ち切った方が、 いいのかもしれない――――……
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