弱き刃はか弱き者に向かう

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填星境(てんせいきょう)ホフヌング。 この妙な名前の対戦型アーケードカードゲームは、蜜柑露(みかんつゆ)市のほとんどのゲーマーを魅了した。 このゲームは、填星境ホフヌングという異世界にやってきたプレイヤーが自分のアバターとモンスターを育成および融合させ…ひたすら最強を目指すゲームである。 また、カードは既存のカードゲームとして対戦出来るようルールも設けられている。 アーケード以外の好きな場所で遊べるところもゲーマーを魅了した。 また、ラメカードが含まれた専用デッキを別口で販売しているところも人気が高い。 ルールもシンプルかつ明解…コストが低いところがとても親しみやすかったのである。 そういうわけで、ここは蜜柑露市のゲームセンター。 ここに二人の姉弟が連れ込まれた。 「填星境ホフヌング…か。」 そうため息混じりに呟く姉は長い前髪と後ろ髪をバンダナで結わえた、ポニーテール姿の少し細い高校生。 彼女の名前は、兎素 奈美(ともと なみ)という。 「ホフヌングってドイツ語で望みっていう意味だよ。 勝者にはどんな願いも叶えるって設定だってさ。 対戦型カードゲームで願いを叶えるっていうのもどうかと思うけど。」 そう嫌気に呟いた弟の名前は聡輔(そうすけ)。 人懐っこくて小柄なブラウンのショートヘアの男の子だ。 特に姉とは似た者同士で仲が良い。 「確かに負けたらストレスだもんね。 …ったく、父さんも母さんも何が楽しいんだか。」 そう愚痴る二人のポケットの中には、ホフヌングの記録媒体であるメモリージュエル。 アーケードで遊ぶとき、アバターのレベルと所持金などのデータをセーブするためのものだ。 今回はホフヌングのイベントのため、新規プレイヤーを紹介するとレアカードがもらえるらしい。 それで連れ込まれされたのだ。
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