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そんなこんなで準備を整えるや…3人はホフヌングの機体の前に立つ。
「とりあえず…分解してみますか。」
見張り君の工具を使って、信久が外装を剥がす。
中の基盤がむき出しになり…基盤とは別の場所に黒くて小さい奇妙な箱がついていた。
明らかにゲームの基盤とは別の部品。
「匂うな。」
グシャ!
とりあえず、割ってみた。
「バカの次はアホですか!」
得体のしれないものをいきなり破壊する信久の神経が理解出来ない見張り君。
そもそも、アクアリオの技術を使っていることは分かっているのだから見張り君に聞いてから開けるべきである。
…普通なら。
ゴシュ!
中から青く染まった水が吹き出した。
体長は高校生の身長ぐらい。
どれだけの怨念を吸ったか知らないが、質量の法則を完全に無視している。
「怨念に犯された水の精霊?」
見張り君が説明する。
まるで生き物のように三人に襲いかかる。
「憎イ…憎イ…。
お前タチハ、強イのダナ?」
怨念が言の葉を口にする。
這うように、被さるように…こちらに向かってくる。
「ひっ…!」
魔性を目の当たりにすると、やはり免疫が無いから奈美は怯える。
篳篥を呼びたいが、今は駄目だ…チカラを温存しなくてはならない。
「そりゃ強いだろうよ。」
信久の髪の毛が染まる。
「かかってくるなら返り討ちにしてやるが。」
話し合いは無駄だと分かっていたが、せめて穏便に済ませて欲しい。
奈美は生命の危険を楽しめる戦闘狂ではない。
「お前タチガイナケレバ、我々は自分を信じテイラレタ。
自分を信じテ、ドコマデモ歩イテ行ケタノニ。」
敗北は、積み上げてきた己のアイデンティティーをすべて破壊する。
何年かかって己を鍛えても、一度の敗北だけですべて無に帰するのだ。
風音が現にそうだった…顔に出ず…分かりやすい態度ではなかったけど。
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