新しい仲間

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「お前タチも恨みヲ知レ。」 怨念は失うことの恨みと悲しみを突きつける。 「勝者ハ無知。」 「負ケル悲シミを知ラヌ。」 「故ニ無責任。」 「無責任カツ…残酷。」 「失ッタラ…ドウスル。」 次々と責め立てる…確かに、強い人間は無茶ばかりするもんだけど。 勝利は勇気と希望だし。 「失うのが怖くて…勝負なんか出来るか…。」 朱夏は愚痴魔は嫌いだ。 理由は単純…何もしなかったら後悔するからである。 彼は勝者であり敗者でもある。 だいたい彼は、何かを失っていないアホではない。 だから、朱夏も信久もそんなたわごとはどうでも良い。 大切なのは、何度失っても立ち上がることであり…やり直すことだ。 助けたい義理の両親がいるのだ…ゲームに生き甲斐を感じる父と楽しみを感じる母が。 ホフヌングは信久の両親のすべて。 その結晶を汚された事が悔しくてならない。 「不毛な負け犬どもが…喰うぞガキッ!」 ついに朱夏がキレた。 奈美がそっと目配せする。 手には例のバタークッキー。 「いいもんやるわよ!」 バタークッキーを袋から出してちらつかせる。 「こんな時に何を…うわっ!」 水の精霊がバタークッキーの匂いにつられる。 怯えて後退りした奈美が、怨念にバタークッキーを投げつけ…クッキーが朱夏のいるあたりに落ちる。 距離は怨念と奈美との間に朱夏と見張り君が挟まる状態。 バタークッキーにつられた怨念は朱夏と見張り君のあたりで動きを止め、奈美は一気に去る。 「二人とも、ちょっとヤボ用果たしてくるわ!」 奈美は男二人を置いて逃げた。 「奈美、気をつけてな!」 怨念と戦いながら朱夏が応援する。 見張り君は奈美の思惑に気づいた。 「ちっ…思ったより頭が回るな。」 少し油断したかもしれない。 アホだと思っていたから、手抜きしたのが仇になった。
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