35人が本棚に入れています
本棚に追加
朱夏は一気に決着をつけようと龍神のチカラを解放する。
腕が紅に染まり…鱗が生える。
だが、面積が思ったより広い。
腕だけではなく、足や胴体も。
(…!?)
その時、妙な異変が起こった。
怨念が朱夏のチカラで吹き払われる。
だが、それだけではおさまらない。
―もっと、もっとチカラを!―
アンノウンの声が聞こえる。
闘争本能が止まらない。
怨念を吹き払っても渇きが癒えない。
チカラのコントロールが出来ないわけではなかったが、非日常への欲求が勝っていく。
当たり前だ…朱夏が本性で、信久は擬態だ。
こいつのような裏表のない奴が嘘をつき続けることがどれだけ苦しいか。
欲求が爆発する。
戦いの神であるこいつを満たすのは、やはり狩りでしかない。
超能力者にとって、己を満たすのは世界の表か裏か。
非日常の戦いの刺激か、穏やかな日常の平穏か。
日常のホフヌングバトルでは満たせないのだろうか。
超能力者である以上…彼は生命をかけた戦いの中でないと満たされないのか。
ブリガンテ…略奪者を意味する彼の魂は戦いの中ですべてを勝ち取り…奪っていく。
それが、朱夏のすべて。
コアアアッ!
「何やっているんだ!」
口から炎を吐く。
もはやそれは人間の彼ではなかった。
非日常の戦いに満たされ、擬態を捨てた炎龍の神。
とうとう野生の本性が、日常の理性に勝ったのだ。
ザシュン!
さらに怨念は仲間を呼ぶ。
だが、こうなった以上朱夏の敵ではない。
(…っ…精神攻撃が闘争本能を揺さぶったな。
まがりなりにも、人間並みの知能はあるか。)
怨念は次々と片付けられていく…見張り君は突然起こった妙な現象に仮説を立てていた。
かくいう見張り君も怨霊のチカラのため半分共鳴しかかって苦しいが、何とか耐えられる。
最初のコメントを投稿しよう!