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(そういえば、もともとこの怨念はチカラを引き出す水の精霊だったな…。
このあたりはお手のものか。)
朱夏は気づいていないかもしれない。
精神攻撃におかされながら、狂ったように水の怨念を狩っていく。
もしかしたら、ゲームセンターを破壊するまで終わらないかもしれないが。
アレは放置だ…他にもやらねばならないことはあるし。
(とりあえず、データをカメラに収めて退くしかないな。
あとはノウムがうまくやるだろう。)
超能力事件の隠蔽は最優先事項だ。
足止めが終わったらすぐにノウムが飛んでくる。
見張り君はとりあえず、捕まらなければいい。
それに、奈美の行き先はおそらく蘇江沢グループのラボ。
タンジーと尊栖坂をぶつけ合わせているうちに信久の両親を救い出すつもりだな…どちらの人質にもされないように。
尊栖坂の盤洞重役がそんなに甘くはないとは分かっていてもやらずにはいられないのだろう…勇敢な女だなと見張り君は思った。
さすが非日常に首を突っ込む変わり者なだけはある。
そこまでさせる理由は何か、興味はあったのだが…それは推測で分かるわけではなく。
朱夏の攻撃で何とか怨念から抜け出せた見張り君は、無法地帯から撤収する。
その背中には、ひとつの声を聞いて。
「……アア…!」
「ギィ…ガアアッ!」
怨念が片付いていく。
怨念の断末魔と朱夏の咆哮だ。
今の朱夏には言葉はないはずだ…だが、ひとつ言葉として聞き取れる箇所はあった。
「ガ…アアッ…ナ…ミ…!」
最後に吼えたそのうめき声を最後に彼の意識は途切れていく。
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