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「まぁ、超能力者は必要にこしたことはないから好きにやらせているけど。」
律乃は面倒そうに呟いた。
「みんな純粋すぎるのよね…恋愛結婚だなんて、陰陽師の世界では無縁じゃない…。」
かくいう律乃はもちろん政略結婚だ。
彼女に言わせれば、みんな家を守る自覚が全くない。
「でもお母さん、結婚は大切なことだから…。」
風音は恋愛結婚に憧れてはいるが、陰陽師としての立場上諦めてもいる。
自分のワガママで他人に迷惑をかけるのはよしとしない。
だから禍つに堕ちるのだ…女にとって恋愛と結婚ほど神聖なものはない。
諦めようとして、諦められるものではないのだ。
「風音…あなたは人間という無能なキチガイにあてられ過ぎなのよ。」
防人とは思えない発言が出る。
「アレはね、無知な無責任集団なの。
まったく、あの方も何を考えて風音をあんなバカの巣に送り出したの…。
風音は最後の防人なのよ?
契約さえなければ…。」
バカの巣とはニギリのことである。
「契約?」
十郎太は聞き逃さなかった。
「防人の子供を残すことを条件に、風音を高校に通わせたの。
この子はね、陰陽師にヒーローオタクを重ねた妄想狂だから。
まったく、何を考えているんだか。」
久しぶりにまともな話を聞いても嬉しくない。
もともと優しい姉ではなかったが。
本来、裏の世界の人間は自らを社会から隔離して暮らす。
尊栖坂のように重要な役割を担っているならなおさらだ。
その証拠に明海は中卒で、神社を継いでいる。
社会に関わると社会の影響を受ける…無責任なバカが伝染り…禍つに堕ちやすくなるのだ。
「ヒーローオタクって…防人は魔物の危機から町を守るのが大切な…!」
風音が反論するも、明海からチカラが飛ぶ。
バシュン!
「…くっ!」
風音は反対側の壁に吹き飛ばされた。
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