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「風音…いい加減に防人としての自覚を持ちなさい。
なまじ無知なバカたちに肩入ればかりすると、本当に身を滅ぼすぞ。」
親として娘の自覚を促すにも言い方が最低だった。
人柄は態度に出ると言うが、こいつらこんな性格でよくもまぁ世間に溶け込めるものだ。
ノウムの記憶操作さえ疑う。
「そんなことよりも早く鍋を食わないか?
お父さんはもう腹が空いてきたよ。」
鍋からいい香りの湯気が立つ。
「盤洞さんも遅れているみたいだし…先に食べてしまいましょう?」
足止めなんだから、尊栖坂陣営はすべて来てもらわねば困る。
だが、盤洞重役やみつばに雅たちは全く顔を見せない。
「よろしければ、こちらから連絡しましょうか?
風音、君も来るんだ。」
風音を連れて席を離れたい十郎太は桜規に申し出た。
弱った彼女を助け起こす。
「構わないよ。
そういえば…。」
しげしげと十郎太をながめる桜規。
「久しぶりに会ったが、少し陰の気を感じるね…。」
さすがに陰陽師…カンがいい。
「さっきまで怨霊退治をしてましたから。
陰の気を身体に撒いて怨霊を引き付けていたのです。」
すぐに作り話でごまかす。
器用な男だと、風音はうらやましくなる。
「熱心なことだね。」
すぐに納得した。
「とはいえ、あまり無茶はいけないよ…君はこれから明海の婿になるんだからね。」
なる気はない。
「ありがとうございます。」
だが、合わせねばならないのは辛かった。
その後、風音を連れて逃げるように去っていく。
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