供養

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だから、導く存在が必要なのだ…それが依存にして破滅になろうとも。 彼女は大義…己は道しるべ。 道が見えず、行き場のない彼女を生かせるのは自分だけ。 だから、言の葉を放つ。 「あなたの望みは、あの河原に眠る魂たちへの供養でしょう? ですが、怨霊の身の上としましては栄養分を拒絶することが供養になる理由が分かりません。 風音…あなたは一体何がしたいのですか?」 強く詰問する。 「私は…!」 あまりにも理路整然とした十郎太の言葉に、風音は身をこわばらせる。 食べないから覚えていられる。 自分の中で、彼らが生きる。 風音はそう思いたいのだが…実のところそれは供養とは思えない。 鍋料理を拒絶することで、結果的には何も生み出していないからだ。 風音がするべきことは、自らの禍つと絆を結ぶことだ。 願望と折り合い、可能な限り己の未来を切り拓くことである。 だが、風音にはそれが出来ない…自分の中の過去と禍つ魂を許せないから。 彼女が己を許すには己の手を汚し過ぎた…。 どんなに弁解してもその事実は変えられない…世界の裏に生きる人間の宿命だから。 むしろ責められるのは、戦とはいえこの結果を招いた十郎太の方だろう。 とはいえ、彼は自分の行いを恥じてはいない。 怨霊の参謀として風音たちを徹底的に追い詰めただけである。 それが『誇り』というやつだ。 誇りとは己を信じること…自分の道の行き先に全力を尽くすこと…。 そして、その因果を受け入れること。 カタキを討てばすべてが終われる…風音もそのひとつになろうが、最近では少し分からなくなってきた。 怨霊をも許す風音を見ていると彼女の未来がもしかしたら…。 不意に、風音のバカさかげんに興味が沸く。 やっぱりオラクルの影響だと自嘲的な考えがよぎったが、そのオラクルを感じない。 きっと心のどこかにいるのだろう…くるべき時のために。
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