供養

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―フフ…どうやら私の粘り勝ちみたいね。― アンノウンから、風音の声がする。 彼女のチカラへの扉…彼女の本質そのものが禍つを認識せざるをえなくなることで目覚めかけているのだ。 こちらの方はオネットとでも呼ぶべきか。 「粘り勝ち?」 カードを引っ張り出し、会話する。 「どんな策士も私怨を含めた感情には勝てないものよ。 彼は、尊栖坂の復讐心に捕らわれていかに私たちを苦しませようと彼は必死だった。 その中で用意周到に事を運びたいから、目に見える功績を残せず本拠を空けすぎた。 だから、生命を与えてくれたタンジーに見切りをつけられたのね。 彼に与えられた存在概念が…タンジーに戻されていく。」 だから、本来生命がない怨霊の彼が目眩や立ちくらみに苦しんだ? 風音が彼の終末を突きつけられ…目の前が真っ暗になる。 「やはり…! だが、タンジー様が見切りをつけるには早すぎる。 何かの干渉があるはずだ…ハトウガか?」 尊栖坂にも見つけられないタンジーの本拠に乗り込める奴など…ハトウガぐらいしかいない。 彼は前の立ちくらみで察していたかもしれない。 それでも、尊栖坂への憎しみが勝ったのだ。 己の生命など、もとよりどうでも良いのだろう。 人が生きるのは生命ではなく…その有り様だから。 これもまた、満たされるもののひとつなのだ。 「おそらくそうね…。 まぁ、他の神様かもしれないけど。 この町には他にも神様が出入りしているみたいだし。」 柿鬼市の人造神子である。 「ハトウガが…動けば…タンジーは…壊滅…する。 早く…戻ら…ないと。」 ハトウガがタンジーに乗り込む理由は怨霊の壊滅以外にない。 そうすれば、十郎太も復讐どころではなくなる。
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