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だから、食わねばならない。
怨霊は実体がない…人間には実体がある。
だから、ひとつになれる…決して離れる事がなく。
オネットは十郎太の頭脳と精神そのものが欲しい。
自分の世界を壊した憎い敵であると同時に、その存在に魅了され…依存していったのだ。
誇りと信念は人生の指針だ。
生きていくためには必要なことだが、それに囚われて失ったものもたくさんある。
風音は陰険だと信じている計略が嫌いだから、考える事が出来ない。
防人として、正直かつ公明正大でいたいのだ。
頭は悪くはないのだから、考えることは出来る。
だが、頭を使えば彼女の魂は誇りが知恵を受け入れずにズタズタになってしまうだろう。
だから十郎太の精神が必要なのだ。
彼の魂があれば、頭を使っても彼がしたことだと自らの誇りを傷つけることはない。
風音の方もまたキレイでいたいのだ。
足りないものを補うために…あの時の河原での出来事の痛みを繰り返さぬために。
安らげることは…魂が満たされることだから。
だが、オネットはともかく風音はどこかが納得いかなかった。
しかし、キレイでいたいがために頭を使うことから逃げてきた風音には彼女に打ち勝つ理論は持てない。
しかし、弱っていく魂をただ黙って見ていたくはない。
救いたいのだ…怨念や怨霊を産み出さない、優しい世界が見たい。
感謝はされなくていいが、人の悲しみを少しでも減らしたかった。
優しい笑顔、明るい未来。
それに触れている時は風音は満たされていた…イジメの中ではあったが、支えてくれる人間はたくさんいた。
少しでも幸せな光景を見たいから、一方的な善意を振り撒く自分を。
基本的に、超能力者は願っても手に入らない穏やかな幸福に飢えている。
戦いの中で手に入らないものを得ようと足掻いている。
今さらながらそれに気づいた…だから、彼女は日常に幸せを押しつける。
嫌がられても、嫌われても。
日常の人間は幸せの大切さを知らないからだと、固く信じて。
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