供養

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そのあたりからして超能力者は人間ではない。 人間は幸福の価値を知らないから無責任かつ不幸だ…そう頑なに信じていることからしてすでに傲慢だろう。 超能力者の秘密は知らないにしろそんな態度を井上さんを始めとした周りが察し…風音の周りからはいつも人が離れていく。 人間は無知だが、感情を理解出来ない生物ではない。 基本的に、超能力者はそれを知らないのだ。 ここは人間と超能力者の越えられない壁だ。 人間と超能力者は、その心理や思考からして全く別物なのである…根本的なところから理解しあえないほどに。 そんな脱線話はともかくも、風音は十郎太を守ろうと必死だった。 なぜ守るのか…本人には分からないだろう。 ズモモモ! アンノウンの術が荒れる。 「…欲しい、欲しい! 彼は私を満たすすべて。 誰にも渡さない…決して離さない…私たちは永遠にひとつ。」 ゴシュ! 無理矢理肉体から魂を引きずり出す。 「…術式…きゃっ!」 力ずくで、アンノウンに引きずり込まされる彼の魂を術でひき止める。 ほとんど考え無しのとっさの行動だ…でも、考えているヒマはない。 「か…風音!」 十郎太の声が聞こえる。 だが、反応しているヒマはない…助けを呼ぶ気にはならない。 自分が感じた心のままに、風音は彼を助けようとする。 「これ以上…嫌がっている…人を…苦しめるな…!」 迷える魂を救うのは風音の誇りだ。 彼女はどんな存在でも助ける。 「嫌がっている? もともとあなたと私の肉体の中の神の血を欲しがっていた男じゃない。 そのために、あなたを薬で弱らせたんでしょ? その分魂と肉体の所有権の取り分が私に移ったんだけど…本体と禍つ魂はひとつの精神力を共有しているから。」 オネットのいう通りだ。 もともと、思考と判断力は禍つに丸投げしていた風音の精神力の取り分は少なかったが…薬でさらに弱ったらしい。 風音に勝ち目などなかった。
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