供養

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「風音、何があったのか説明しなさい!」 笑顔のままで硬直する娘に対して詰問する母親。 目の前で、家の存続の命運をかけていた男が倒れているのだから当たり前といえば当たり前。 「…つは…!」 かすれ声ぐらいしか出なかったが、説明は出来た。 「禍つが…玖雀くんの魂を? どうしてくれたんだ!」 しかも、中身の説明もちゃんと偽っている。 この状況下で嘘をつけるとは風音も成長した。 本人は気づいていないが、かなり十郎太に入れ込んでいることが分かる。 禍つ魂は正直なのだ。 「とにかく吹明様に連絡を! 律乃は蘇生法を頼む!」 肉体から魂が離れると、肉体と生命そのものが危ない。 だから術で魂が抜けた生かしておく必要があるのだ。 桜規は吹明に事情を説明して玖雀を探索させ…律乃は玖雀の蘇生措置。 明海は禍つの探索の実働部隊だ…しばらく待機だな。 「分かった! 風音も行きなさい!」 「はい…。」 風音にまだ親に逆らう気概は足りなかった。 当事者なので事情は喋らされる…もはや足止めどころではなくなった。 だいたい吹明にバレたら、十郎太のこともバレる。 とっさについた嘘もあまり効果は無いようだ。 前線の奈美にも連絡したいが…この場を離れられない。 (奈美…ごめん、私のせいだ。 何とか無事でいて…。) 風音は奈美の無事を祈った。 巫女だからではない…友人を危険に晒す自分のふがいなさを呪うのである。 でも、本当はそれが大切なことではない。 風音は防人を背負うのではなく防人を高めるべきだった。 それが、供養に繋がる。 どんなときでも失態は犯す。 だからせめて、亡くなった者たちの意志を無駄にしてはならない。 風音はそれを知るべきだ。 未来のために。
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