一四年前

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 誘拐された少年。  母を目の前で殺された少年。  そんな悲劇を背負った西園寺和人は、父の選んだコメディーの世界に入らなかった。いや、入れなかった。悲劇を背負った者は笑ってはいけない。そして、悲劇を背負った者を笑ってもいけない。それを和人はわかっていた。  テレビでの西園寺和人は常に影があり、暗かった。  それでも人気はあった。  あの西園寺祐司の息子であり、一四年前の事件で母を殺された悲劇の少年であり、そして、なかなかの美少年でもある。
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