第1話

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アリと別れたミラナは博物館へ留めっぱなしになっているマイカーに向かった。 ポルシェはなんの変わりもなく目の覚めるようなイエローに包まれてそこにあった。 後部座席に乗り込む。 ミラナは運転席との境にあるスライドを下ろしてヒールを脱いでから寝転んだ。 後部座席の窓にはスモークが貼ってあるので、これで外からは見られない。 確かめた腕時計は2時半を指していた。 ーーどうしようかな。お城。 この後の予定だったが今から行くと、帰りは遅くなってしまう。 でもこのままホテルに帰るにはちょっと早い。 ーーどっちにしろホテル、帰りたくないなぁ そしたらこのポルシェ返さなくちゃいけないし。 というかこの車の盗難届は出されているのだろうか。 ーーよし。 思い立ったが吉日。ミラナはパソコンを開き、ものの十分で警察のデータに侵入した。 そこには膨大な量の情報があり、そこから一つのデータへとたどり着く。盗難届リストだ。 スイスのルガーノでは、今日一件の盗難届が出されていた。 ミラナはさっさとそれを消去して、盗難届が出された事実事態をなかったことにした。 ーーこれであとはホテルに戻らなければ、持ち主に見つからなければオッケーね ーー残る問題はお城だけど、やっぱりちょっといってみるかな。日が落ちればライトアップされるし、それ見たい。 ミラナは晴れやかな笑顔を顔に浮かべた。
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