第1話

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美しいアルプス山脈に囲まれたスイス連邦へ、ミラナは足を踏み入れた。 ここはスイス南部に位置する大きな駅。たった今、ヨーロッパを横断する列車が到着したところだ。 駅構内はたちまちの内に人で埋め尽くされ、ベルが鳴り響いていた。 ミラナは列車を降りると、まずは出口へと向かった。 一刻も早くこの熱気から解放されたかった。 真夏だというのに駅構内の空調設備は壊れているに違いない。 自分のバックパックをしっかりと胸に抱いて人々をかき分け、やっとの思いで改札までたどり着く。 パンツのポケットから切符を出して改札を抜けた。 だが人ごみにはたいした変化はない。 急いで周囲を見回して出口を探す。 ……いい物を見つけた。 ミラナが捉えたのは出口ではなく、従業員通路のとびら。 さっそくそちらへと歩いていった。 人々は誰もミラナに注意していない。とびらには鍵もかかっていない。 そのまますっととびらを開いて通路に入った。 通路は明るかった。 そしてなにより静かで人がいない。 ミラナは自然と笑みを浮かべていた。 通路を進もうと、バックパックを背中に掛け直して、 「あ……」 大事な事に気がついた。 通路の地図がわからないではないか。 左右どちらに進めばいいのだろう?
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