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美しいアルプス山脈に囲まれたスイス連邦へ、ミラナは足を踏み入れた。
ここはスイス南部に位置する大きな駅。たった今、ヨーロッパを横断する列車が到着したところだ。
駅構内はたちまちの内に人で埋め尽くされ、ベルが鳴り響いていた。
ミラナは列車を降りると、まずは出口へと向かった。
一刻も早くこの熱気から解放されたかった。
真夏だというのに駅構内の空調設備は壊れているに違いない。
自分のバックパックをしっかりと胸に抱いて人々をかき分け、やっとの思いで改札までたどり着く。
パンツのポケットから切符を出して改札を抜けた。
だが人ごみにはたいした変化はない。
急いで周囲を見回して出口を探す。
……いい物を見つけた。
ミラナが捉えたのは出口ではなく、従業員通路のとびら。
さっそくそちらへと歩いていった。
人々は誰もミラナに注意していない。とびらには鍵もかかっていない。
そのまますっととびらを開いて通路に入った。
通路は明るかった。
そしてなにより静かで人がいない。
ミラナは自然と笑みを浮かべていた。
通路を進もうと、バックパックを背中に掛け直して、
「あ……」
大事な事に気がついた。
通路の地図がわからないではないか。
左右どちらに進めばいいのだろう?
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