第1話

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時刻は昼。 ミラナはポルシェを博物館の駐車場に入れてから車の外に出た。 天気は快晴。空を見上げる彼女の青い瞳にはサングラスがかけられ、ブロンドは一つに編まれている。 そしてハイウエストで短い丈のワンピースを身にまとい、足下は華奢なハイヒールで飾る…という昨日からは想像の出来ないキレイな格好をしていた。 朝、結局タクシーを呼ぶのもヒッチハイクするのも面倒くさかったミラナは、ホテルの駐車場から一目惚れした一台をお借りして美術館へとやって来た。 ……いや正直に言おう。美術館へ向かう途中に、ショッピングモールを見つけて誘惑に負けてついよってしまったのだ。 そして手に入れた山のような服と靴とカバンその他は、今イエローのポルシェに積んである。 一目惚れしたお気に入りのポルシェに。 勘違いしないで欲しい。 服はきちんと自分のお金で買った。ポルシェは違うけど。 そう。寄り道をしていたら太陽はすっかり真上まで昇っていた。 日の光にあたる博物館をサングラス越しに眺めると(ちなみにさっき買ったサングラスだ)、それは煉瓦造りの一般的な中世ヨーロッパ建築だった。 赤い外観はなかなかかっこいい。 お金を払って入館すると中は結構混んでいた。 とそこでルートの先の方に日系人の団体を発見。ミラナはゆっくり見学することを心に決めた。 団体客には近寄りたくない。 一つ一つ見ていくと、展示品はなんてことはない。なんとかという王族の遺品と、彼らの時代に関わる価値もそこそこの品が並べられている。
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